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データレートと搬送波周波数とコネクタの関係は?data rate and carrier frequency

データレートと搬送波周波数とコネクタの関係は?

Wi-Fiの電波は2.4GHzと5.0GHz帯ですね。でもつなげた時に利用しているデータ通信は100Mbpsとかだったりします。少しだけややこしいですね。

周波数とデータレートのお話はこのコラムでもさせていただいていますが、そこでの話とは事情が違いそうです。

同コラムの「最後に」では


例えば、変調された信号を通すような無線系の接続であれば(同軸コネクタなどが使われます)、搬送波の周波数である「非常に高い周波数」の「狭い帯域」で優れた=安定した性能を有していることを求められます。


と、すこしだけ触れましたので、よければあわせてご覧ください。

図1 無線の周波数とデータレートって?

今回は無線で送るような高速信号について、コネクタはどうような性能を求められるのか等について説明したいと思います。

大昔に工学系の学校を卒業しているとはいえ、コネクタメーカの一広報担当には少々荷が重い内容ですが、テーマの流れからは「変調」に関する話も避けて通れません。ですので、専門家じゃないからこそ、専門的な説明はなるべく避けつつ自分の理解の範囲でザックリと、付け焼刃で勉強した内容も交えながら説明させていただくことにしました。より技術的な詳細を確認したい方は、多くのサイトで説明されていますので、それらもご覧いただければと思います。

そして、コネクタとはちょっとかけ離れた変調等の世界の話から最終的に、「ではコネクタでは・・・」というところまで着地させたいと思います。

変調とは

ざっくり言いますと、変調とは「電波として送りやすい周波数の電気の波に、信号の波形/情報を乗っけてしまおう」というものです。電波として送りやすい電気の波を搬送波と呼びます。

また、変調された信号は相手側でそのままは使えないので、送りたかった信号だけを取り出す「復調」という処理も行われます。

図2 変調→送信→受信→復調

こうやって、電線を使わず無線通信や光通信などで信号の送受信を可能にするものが変調(と復調)なんですね。最初に話をしたWi-Fiであれば、5GHzや2.4GHzといったものが搬送波の周波数で、100Mbpsはそれに乗っかった信号のデータレートになります。

なお、Wi-Fiの変調はいわゆるデジタル変調というものです。デジタル変調の話をする前に、まずはアナログ変調について説明したいと思います。

アナログ変調

アナログ変調には3種類があります。

  • AM変調/振幅変調
  • FM変調/周波数変調
  • PM変調/位相変調

この中でAM/FMの2つに関しては「AMラジオ」「FMラジオ」として、耳にしたことがある方が多いと思います。最近はそうでもないのでしょうか? いわゆるインターネットラジオの方がなじみ深くなってしまっているかもしれませんね。ところで、あれをラジオ=radioと表現するのは、TVのチャンネル変えることを「チャンネルを回す」と言ったり、電子レンジで温める事をレンチン(今は完了音的にはむしろレン”ピー“ですよね)と呼び続けていることと同じく、「方式変わるとも名を残す」一例ですね。

話を戻しまして、まずはAM変調から。その名の通り、搬送波の振幅=大きさを変えることで信号を乗っける方式です。計算式にすると変調度などのさまざまな係数も含まれて、それなりにややこしいものになります。詳細はこちらでは記載しませんが、技術的な解説はさまざまなサイトでされていますので、お手数ですが検索などされてご参照いただければと思います。

さて、図にはあえてややこしい「送りたい信号」の波形を選んで、変調波を作ってみました。

図3 AM変調と搬送波周波数

ここで見ていただきたいのは、元の信号波形の再現性に関してです。(そのためにすこしややこしい波形を使いました)

上段の「AM変調ケース ①」では、変調後の波形の包絡線を取ってやれば、そこそこ元の波形を再現できそうなイメージですね。

一方、下段の「AM変調ケース ②」では搬送波の周波数を落としています。すると、変調後の波形はふにゃふにゃなだけで元の波形の片鱗もありません。動きが激しい時ほど終えていない・・・ということが読み取れます。

つまり、ケース ②では送りたい情報量に対して、搬送波の周波数が追いついてないんですね。そのために変調時に元情報が消失してしまっています。視覚的にわかりやすいので、AM変調の例で説明しましたが、情報量をなるべく多く送るためには、搬送波の周波数を高くしなければいけません。

これは次に説明するFM/PM変調でも同じです。言い方を変えると「送りたい信号の周波数(成分)より、搬送波の周波数はずっと高い必要がある」ということです。

なお、搬送波周波数あたりの情報量の含有効率は、AM変調が他の2方式より高くなります。ところが、AM変調では伝搬強さの変化で送りたい信号を再現するため、どうしてもノイズに弱くなります。

そこで、FM変調やPM変調という方式が登場します。搬送波の振幅ではなく、周波数および位相を「送りたい信号に応じて」変える方法で、情報量の含有効率は落ちますが振幅への影響として発生しやすいノイズには強くなります。

今度は簡単な信号を送る場合の図を用意したので、それぞれ波形を見てみましょう。

図4 FM変調とPM変調の波形

違いがよくわかりませんね・・・・。FMとPMは本当に兄弟のような関係で、ちょっと区別がつきにくいのです。(私も学生の頃、変調に関してはこの辺りで躓きました)

周波数の占有幅の影響でPMの方が効率がやや良い(AMほどではない)ですが、回路が複雑になりやすいという違いがあるようです。ただFMはラジオ等で日の目を見ましたが、PMはあまり聞きません。実はその方式が、次に続くデジタル変調への応用としてむしろ花開いて行きます。

デジタル変調

昨今、情報社会=デジタル化というイメージを持たれることが多いのではないでしょうか。漠然とした印象では、デジタルの方がアナログより情報豊かだと感じますね。生み出される結果としては間違いではないのですが、電気信号の世界ではアナログの方がずっとたくさんの情報を持っている、もしくは再現に「必要とする情報」がずっと多いのです。もっと言えば、すべての電気信号の「波」はデジタル用のものであっても連続的という意味ではアナログなのです(離散的ではない)。アナログ的な再現はあいまいになりやすく、正しく再現するのに非常に手間がかかります。デジタルでは情報を要点をおさえてまとめられているため、再現が容易で可用性が高いのです。

すこし概念じみた話になりましたが、要するに変調方式もデジタルならではの効率の良い方法があるということです。

前項で「送りたい信号の周波数(成分)より、搬送波の周波数はずっと高い必要がある」と書きましたが、周波数をデータレートに置き換えるとデジタル変調では事情が変わってきます。イメージを持たせるために、「情報量の多い」アナログ信号を送るためのAM変調でデジタル信号を変調してみましょう。

図5 デジタル信号をAM変調してみる

AM変調でデジタル信号を変調してみると、図の下段の右側のようになります。

アナログのAM変調の例で出てきたものに比べると、ちょっともったいない感じがしないでしょうか?

アナログ変調での信号の送信では、送り先でいかに「波形の形をオリジナルに近い形で再現」させるかというところが信号品質の鍵になります。

そこで再現しようと頑張ってしまう部分には、例えばデジタル信号ではオリジナルで「意図したものではない」細部の形状も含まれます。

ですので、アナログ的な考え方でデジタル信号を送るのは「ちょっともったいない」という感じになるんですね。

図6 デジタル信号のアナログ的再現とデジタル的再現

そこでデジタルならではの変調方式 = デジタル変調が編み出されます。

最初のうちはゼロの時に信号を出さず、1の時だけ発信するAKS(Amplitude Shift Keying)や、2つの周波数を0と1に割り当てられたFKS(Frequency Shift Keying)という方法です。

図7 初期のデジタル変調 ASKとFSK

アナログ変調に対して、こちらは大分シンプルです。

ただ、かなり簡単にはなりましたが、これだと搬送波周波数に対して送れるデータの量は少ないように感じます。加えて、ASKではスイッチングだけですが、FSKでは2種類の波が必要となってしまいますね。

そのためもうちょっと複雑にしてデータの効率を上げられないかというところで使われたのが、アナログでは大きく日の目を見なかった位相変調です。

デジタル変調で用いられるのはPSK(Phase Shift Keying)という方法です。

4つの位相の違う波を利用して、1つのシンボルで2bit分を伝送できるQPSK(Quad Phase Shift Keying)をイメージ化してみました。(2波長1シンボルとしました)

図8 QPSK

イメージはやや不格好な波形になっていますが・・・これなら、ある搬送波の周波数で送れるデータレートがずっと高くなりそうです。

さらにはASKとPSKを組み合わせたような、複数の振幅と複数の位相の杭合わせで大量のデータを送るQAMという方法ができます。位相変調と振幅変調を組み合わせるのですから、それは本当にデータ容量を増やせますね。再現がシンプルなデジタルならではです。

図ではWi-Fi等にも使われる16QAMという方法を載せておきます。(今回は簡易な図にするため16QAMを例にしていますが、64QAMも使われています)

図9 16QAMのシンボル極座標表示

16QAMの振幅と位相を極座標上に乗っけてみると、上記の図のようになります。

16個の青い丸が、伝送に使われるシンボルと呼ばれるものです。16種類のシンボルを持つことで、1シンボル当たり4bitのデータを送ることができます。つまりそれぞれが「0000」~「1111」までに対応します。極座標ですので中心からの距離が振幅、すなわち外側の円の上にあるほど大きいものです。

各円周上、垂直上方向で位相ズレゼロとして、右に回っていくほど「その回った角度分」、位相のずれた/進んだ信号ということになります。大分ややこしくなってきましたね。

振幅は3つに分かれています。注目したいポイントとして、同一振幅上での位相分割が、すべての振幅で均等な位相差で変調されているのではなく、すこし独特な分割になっているところですね。その結果として「16分割格子の各中央」にシンボルが入るようになっています。極座標上でのシンボル間の距離が近くなるということはそれだけ区別しにくくなるということですので、各シンボルの距離をしっかり取れるようにこのような形に収まっているようです。

ところで、コラム内の別記事「周波数とデータレート」および「周波数ひずみとコーディング」で説明していますが、NRZではナイキスト周波の2倍、PAM4では4倍のデータレートに対応します。無線で送る変調とダイレクトな信号伝送を一律には比べられませんが、「変調しているにもかかわらず」16QAMではPAM4に匹敵するデータレートVS周波数の効率を持っているということのようです。

これに64QAMや256QAMというものまであるので、とんでもない効率でデータを送れそうです。しかしながら、複雑になってくれば当然受け側での再現も困難になって来る訳で・・・・。

一方搬送波の帯域幅に対して、どれだけのデータが遅れるかというものにスペクトル効率という定義があって、単位はbit/s/Hzで表されます。帯域幅は後ですこし説明しますが、搬送波の周波数の変調に拡張される「レンジ」です。そして、シャノンハートレーの定理というものがあり、ノイズ環境下で誤りなしで転送可能な情報の最大量が次の式で定められていて、符号化の方法に関係なく成立します。

最大通信容量 = 帯域幅 × log 2 (1 + 信号電力 / ノイズ電力)

ノイズが大きくなっていけば、log2で括られたカッコの中身がどんどん小さくなっていき、最終的には1になります。1の対数はどんな低でもゼロですから最大通信容量もゼロになりますね。

一方、信号電力が存分に大きければより高い効率で信号伝送が可能になります。残念ながらというべきか、帯域幅は搬送波周波数ではなく帯域幅なので、もちろん搬送波周波数が高い方が帯域幅も上げやすいですが、ダイレクトにデータレートをイメージしづらそうです。

ということで、実際に無線でどのくらいのデータレートなのか、世代ごとのWi-Fiの例で見てみましょう。(4~7)

無線LAN規格 通信速度(最大) 周波数帯 変調方式
Wi-Fi 7 46Gbps 2.4GHz/5GHz/6GHz帯 4096QAM
Wi-Fi 6 9.6Gbps 2.4GHz/5GHz帯 1024QAM
Wi-Fi 5 6.9Gbps 5GHz帯 256QAM
Wi-Fi 4 300Mbps 2.4G帯/5GHz帯 64QAM

10Mbps程度のイメージだったWi-Fiもかなり早くなっています。

冒頭で引用したWi-Fiの例を100Mbpsとしたのは100BSE-TをWi-Fiで送る例ですが、最大としてはもはや1000BASE-Tも送れるようになり、実際使われている方も多いんだと思います。(私のところはアパートマンションタイプのベース回線で最大でも100Mbpsなので恩恵にあずかっていませんが・・・・)

変調方式も、64QAM(6bit/シンボル)→256QAM(8bit/シンボル)→1024QAM(10bit/シンボル)→4096QAM(12bit/シンボル)とどんどん高効率の変調になってきています。

こうしてデジタルならではの変調方式で、同一の搬送波でも送れるデータ量はどんどん上がってるんですね。

それでは、このような変調された信号をつなぐコネクタって一体どんなものでしょうか?

変調波とコネクタ

変調波の通る場所

変調波を使った無線通信を大雑把にブロック分けすると、下図のようになるかと思います。

まず搬送波と送りたい信号から変調波を作り、増幅して発信する送信側。

それに対して受信側ではアンテナで受信後は余計な周波数(帯域外)のノイズを切り落として、これを増幅したのちに復調する感じでしょう。

図10 大まかな無線伝送ブロックと変調信号の通る場所

この時、赤の網掛けの部分が「有線で」変調された信号が通るところになりますね。ここで電気接続があればそれに適したコネクタが使われます。ちなみに、搬送波は変調波のメインの周波数の信号ですので伝送路形態も変調波と共用にしやすいですね。

変調波で注目すべき周波数

デジタル伝送で伝送路やコネクタが考慮すべき周波数に関しては、先ほども引用した「周波数とデータレート」および「周波数ひずみとコーディング」でも背景等含め説明させていただいています。通常のデジタル信号ではデータレートに基づくナイキスト周波数に対して低い側から高い側まで広い範囲で考慮する必要があります。また、性能の連続性が大事で、例えばナイキストでの特性に対してそれより低域で特性が「良すぎてしまう」と波形のひずみに直結してしまったりします。

それでは変調波による無線通信ではどうなのでしょうか? やはりデータレートに依存するのでしょうか? ここまで読んでいただいた中から「違いますっ!」と思っていただいた方も多いのではないかと思います。

そうですね。変調波による無線通信では、データレートによらず、搬送波周波数によってコネクタが考慮すべき周波数が決まります。もちろん求められる性能の厳しさは前述のシャノンハートレーの定義などからもわかるように、厳しくなったりすることはありますが、気にすべき周波数は搬送波のそれで決定します。

図11 無線通信/変調波 考慮すべき周波数

ただし、変調に際してある程度の帯域を持つことになりますので搬送波±αの周波数域を考慮する必要があります。用途がきちんと決まってる場合は、この限られた範囲でめいっぱい高性能なコネクタが最適となります。

一方でコネクタという部品への要求を顧みた時は、ある程度の汎用性が必要です。またマルチバンドに対応する装置などにはわざわざ各バンドで違う種類のコネクタを使うのも面倒ですね。そのため実際にはある程度広い帯域で高性能を発揮するようなコネクタが好まれます。

シングルエンド伝送、ならば同軸系ですね

変調された信号は基本的にシングルエンドです。

アンテナで拾った後、EMC対策としてチップバランのようなものでシングルエンド→差動変換が行われるケースもありますが、多くの場合はシングルエンドのままで使われます。

コラムの「シングルエンド伝送と差動伝送におけるコネクタ性能差の理由」で説明させていただいていますが、シングルエンド伝送用には同軸コネクタ/ケーブルが活躍し続けていますので、シングルエンドとなれば、同軸コネクタ/ケーブル類の出番となります。

VSWRかリターンロスか?

無線通信に使われる同軸コネクタには多くの特性が要求されますが、特に特徴的なものとしてVSWRという項目が重要視されます。VSWRは基本的にはリターンロスと同じもので、計算式によって一義的に変換も可能です。それぞれの定義はリンク先に掲載していますが、換算式は下記のようになります。

リターンロス (dB) = – 20 × log (VSWR – 1) / (VSWR + 1)

特に無線通信の世界で発展してきた同軸コネクタの性能パラメータとしてはVSWRの方が好まれて使われます。アンテナ性能などでは、リターンロスの形よりVSWRの形式の方がずっとイメージしやすく計算・比較がしやすいからです。

一方で、デジタル伝送の世界ではやはりリターンロスの方が馴染み深くというか、扱いやすいのですが、同軸コネクタがその世界に入ってくるときでも、該当項目で掲げている性能はVSWRであることも多いです。

当社でも「車載同軸カメラソリューション」としてFAKRAコネクタを使用しています。

該当ページにも「FAKRAコネクタメーカーと連携し当社リアケース、PCBコネクタとの組合せにて評価・検証を実施しトータルでの嵌合・伝送の保証を致します」と記載させていただいています。ちなみに、初期のやり取りで反射特性を知りたい時に提示された性能がVSWR表示で、しかもそれがグラフの「画像」だったりすると、受け取った当社のエンジニアはコンマ数秒フリーズしてしまったりするようです。(もちろんその後のやり取りできっちり相互理解を深めますが)

すこし話がずれましたが、気にすべき周波数以外のこういった点も無線通信と直接のデジタル伝送に使われるコネクタが「気を使っている点」の違いを示唆していると言えますね。

どのくらい厳しいのか?

同軸コネクタのVSWRは、測定器用のものなどでは1.05以下等もありますが、無線通信用途では仕様帯域においてその最大値を1.2~1.5としているものが多く、特に1.3以下としているものが最も多いでしょうか。これをいくつかのデジタル伝送を直接行う差動伝送の規格・基準のリターンロス(Sdd21)と比較してみましょう。

当社の基準に関しては「基板対基板コネクタの対応データレートの定義に関して」「FPC/FFCコネクタの対応データレートの定義に関して」もご参照いただければ、設定の背景含めて説明させていただいているのでよろしくお願いします。

図12 作動インターフェイスと反射要求の違い

こちらを確認いただくと、無線通信用のコネクタにおける反射の要求が差動IFに対して厳しいことをイメージいただけると思います。これが「限られた範囲でめいっぱい高性能」と、先に記載させていただいた理由のひとつです。

加えて、VSWRの製品上限値1.2~1.5のものが多いと記載させていただきましたが、実際の機器の設計においては機能を満たす範囲の中でより高性能なものが好まれます。コネクタ以外での部分での劣化もありますし、特に受信側においては、やっとアンテナで拾い上げた無線で飛んできて疲れ切った信号を、すこしでも劣化を防ぎながらとっとと復調まで持っていきたいですからね。VSWR以外の信号品質に関わる性能も同様です。

コネクタの構造について

同コラムの「シングルエンド伝送、ならば同軸系ですね」の項や別コラム「シングルエンド伝送と差動伝送におけるコネクタ性能差の理由」で説明していただいた通り、シングルエンド伝送の場合シングルエンド伝送に見合った構造のコネクタが必要になります。また基板間接続などでは、ただ「自分の受け持ち箇所だけを接続する」以上の機能、例えば組み立てやすさや複数接続時の機械的懸念の排除などを求められるケースもあります。

ですので、同コラムでも説明しているように「同軸構造からの逸脱と接近」という点は、コネクタ構造の鍵になります。そこでも引用している「すり鉢状の受け皿で軸となるコネクタがずれることを許容したフローティング同軸コネクタ」などはまさにこの用途で開発されています。

構造を設計するとき、やはり重要なのはいかに安定・連続した特性インピーダンスを細部まで持つかという点になります。構造と特性インピーダンスの関係については、製品の形態は違いますが「フローティング」と「高速伝送」は相反する要求?」でもすこし説明していますのであわせてご参照ください。

当社の得意とするところは基板間接続ですが、通信機ではアンテナ基板の接続に大量の同軸コネクタが使用されています。車載市場ではシャークフィンアンテナ等、マルチバンド対応でやはり複数の同軸接続が求められます。2022年9月現在は、まだこれらに対応した製品を上市しておりませんが、新たな付加価値を添えた製品を同軸・疑似同軸双方のコンセプトで鋭意開発中です。

その暁には、当社のウェブサイト内の「接続提案」内の「産業用機器用コネクタ」および「自動車用コネクタ」にも新たなアプリケーションも追加できるのではないかと思います。

最後に

最後までお付き合いいただきまして、本当にありがとうございます。

今回のテーマは、これまで以上にややこしい話でした。私自身も疑問であったり、これまで漠然と捉えていたところばかりで、復習したり新たに調査させていただいた内容も多かったです。すこし大変でしたが勉強になりました。

まだまだ難しいところも多く、より良い別の解釈の仕方などあるかもしれませんので、どなたか詳しい方にコメントなりいただけると助かります。関連する製品についても、現在当社が得意としているというよりは、強みを生かしつつも今後新たに力を入れていきたい分野のものになります。今後の新製品発売にも是非ご期待ください!