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2019年3月期 社長インタビューINTERVIEW WITH THE PRESIDENT IN MARCH 2019

2019年3月期は外部環境の影響を受け増収減益。
「顧客価値を創造する100年企業」の実現に向けて、
2025年に長期ビジョン「売上1,000億円」の達成を目指します。

2019年3月期 社長インタビュー

Q: 2019年3月期の業績についてお聞かせください。

由木:
カーエレクトロニクス分野が売上を牽引し、売上高は過去最高となったものの減益となりました。

2019年3月期は売上高428億円、営業利益61億円の増収減益となりました。主力としている車載市場は米中貿易摩擦による中国における自動車販売台数の減少、欧州でのWLTP(国際調和排出ガス・燃費試験法)導入による自動車販売の低迷、インダストリアル市場はスマートフォンの販売不振と貿易摩擦によるFA機器への投資減少などの影響を受け、売上高は前期比1.4%増にとどまりました。また、売上減少に伴う操業度減、南通工場での製品生産の大幅減少などにより、営業利益は前期比27.8%減となりました。

市場別に見ますと、主要地域で自動車販売の不振が続き、カーAVN(オーディオ・ビジュアル・ナビゲーション)分野の売上は減少しましたが、カーエレクトロニクス分野はADAS(先進運転支援システム)・電動化の進展により最高売上を更新しました。特にレーダー・車載カメラなど安全系向けが前期比20%増、電動化関連ではパワートレイン系向けが前期比80%増と好調でした。一方、インダストリアル市場では貿易摩擦の影響による設備投資の抑制などを受け、売上は微減となりました。

製品別に見ますと、車載市場向けを中心に当社の強みが活かせるBtoB製品群が増加しており、売上構成比は48%に拡大しました。

Q: 2020年3月期の見通しについてお聞かせください。

由木:
カーエレクトロニクス分野が伸長、インダストリアル市場が回復の見込みです。

売上高450億円(前期比5.1%増)、営業利益81億円(前期比33.1%増)の増収増益を見込んでいます。

売上については、前期からの外部環境の悪化は上半期まで続くと想定しており、下半期回復型の計画としています。カーAVN分野は中国などでの自動車販売台数減少の影響が予想されますが、カーエレクトロニクス分野では安全系とパワートレイン系が引き続き大きく増加すると考えています。インダストリアル市場では、インバーター、サーボアンプ向けの売上が回復する見込みです。

営業利益については、自動化・合理化による原価低減活動に注力していきます。また、持続的な成長に向けて、75億円の設備投資、15億円の研究開発費を投入する予定です。

※2020年3月期は、為替レート1USD=110.00円、1ユーロ=125.00円、1元=16.50円を前提としています。

Q: 中期経営計画の進捗についてお聞かせください。

由木:
2020年3月期の当初売上目標500億円の達成は来期に繰り越します。

一時的な外部環境の変化を受け、2019年3月期は売上高、営業利益率ともに、2017年5月公表の中期経営計画の数値を下回る結果となりました。これにより、2020年3月期の当初目標としていた売上500億円は、2021年3月期に繰り越すこととしました。

中期経営計画の目標達成は繰り越しましたが、前期の成果や課題を明らかにしながら当期の取り組みを進めていきます。売上に関して、カーAVN分野はディスプレイオーディオ化により1台あたりのコネクタ搭載金額の減少が想定外に加速したことから、マーケティングの強化とコックピット化などを見据えた製品開発を進めます。車載(PA25エリア ※ )市場は安全系、パワートレイン系で順調に売上が拡大していることから、グローバル展開のさらなる強化を進めます。インダストリアル市場では、グローバル拡販の強化と、協業も視野に入れた製品ポートフォリオの拡充に取り組みます。

営業利益の拡大については、原価低減の徹底、設計の標準化などを推進します。

成長に向けた取り組みとしては、Only One製品である“Z-Move ®”ラインナップの拡充や高速伝送対応製品の開発に取り組みます。また、生産力強化に向けて2018年4月に開業した南通工場のスマートファクトリー化や、メキシコでの新工場建設を進めていきます。

経営基盤の強化に向けて、前期は「監査等委員会設置会社」への移行、「指名委員会」および「報酬委員会」の設置を行いました。社外取締役の拡充・活用など、さらなるガバナンスの強化を図っていきます。

※PA25エリア:安全系、パワートレイン系、モーター、インフォテイメント、2輪の5アプリケーション。

Q: 長期ビジョン「売上1,000億円」を目指す目的について、お聞かせください。

由木:
当社の進む方向を明確にし、グローバルトップ10およびブランド価値の構築を目指します。

下図で示す通り、当社は経営理念「未来に続く架け橋として」のもと、「顧客課題の抽出力」「製品開発力」「営業力」の強化を通じて「顧客価値を創造する100年企業」となることを目指しています。これを実現するための事業規模として、売上高1,000億円を長期ビジョンの目標に掲げ、達成時期を2026年3月期としました。

コネクタ業界におけるグローバルトップ10入りを目指すと同時に、ブランド価値の構築を進めていきます。

Q: 今後の市場動向をどのように捉え、ポートフォリオの変化を予想していますか。

由木:
車載市場におけるPA25が拡大、当社が注力すべきエリアとして見ています。

当社の主力としている車載市場では、電動化や自動運転化といった大きな技術革新が進行する一方、コネクタのコモディティ化が進むと考えています。こういった動きとともに、2023年3月期頃には、PA25エリアが一気に拡大すると想定しています。

下図に示すように、当社の売上高1,000億円の50%は、PA25エリアなどのカーエレクトロニクス分野が占める見込みです。

詳細は下記のKey Pointに示しますが、私たちは、グローバル顧客へのスピーディーな価値創造に向けて「販売力の増強」「開発力の拡充」「製造力とコスト力の強化」を推進していきます。

Q: 最後に株主のみなさまへのメッセージをお聞かせください。

由木:
当社は、株主のみなさまに対する安定的な利益還元を経営の重要政策と認識し、業績・経営環境及び中長期的な財務体質の強化を勘案して配当を行うことを基本方針としています。内部留保につきましては、今後予想される経営環境の変化に対応すべく、コスト競争力を高め、市場ニーズに応える技術開発・生産拠点の拡充を含めた製造体制の強化を図り、さらには、グローバル戦略の展開を図るために有効活用することを基本方針としています。
この基本方針に基づき、2019年3月期の1株当たりの配当金は、60円とさせていただきました。中期経営計画では配当性向30%を目指しており、2020年3月期は70円の配当(2019年3月期予想比10円増、配当性向27%)を予定しています。株主のみなさまにおかれましては、引き続き一層のご支援を賜りますようお願い申し上げます。