コネクタメーカー イリソ電子工業

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コネクタの信頼性を向上させるオプションreliability option

2点接点コネクタ

2点接点とは?

コネクタの接続信頼性を上げるオプションとして2点(もしくは多点)接点と言う物があり、様々な構造が考案されています。その名の通り1つの接続に対して「2点」の接点を持つコネクタで、「どちらか片方でも繋がっていればOK」=すなわち冗長接続を実現する技術です。これによって、嵌合時のトラブルや振動による瞬断等のリスクを低減します。また、ある特定の構造条件を満たすことで異物除去の効果を持たせる事も可能です。一方で、弱点と言いますか2点接点としての課題も存在します。これに関する内容は「コネクタとは」でも少し触れていますが、ここではもう少し詳しく説明していきます。

主な2点接点の構造

前述の通り、2点接点には様々な構造が考案され市場に出ていますが、大きく分けると4つになります。
①接点が縦に並んだもの
②接点が横に並ぶ=割れた物
③メス側接点(ソケット)でオス側接点(プラグ)を挟み込む構造
④互いに接点を持ちそれぞれが組み合って二点接点を構成する
 
様々な2点(多点)接点構造は概ねこの4つからの派生と言えます。
例えば同軸コネクタの接点等も360°周回での多点接点と見なすことが出来ますが、これも③の派生と言えます。

冗長接続を的確にもたらすための条件

冗長接続をもたらすためには、前項の4ついずれの構造でも「バネが独立している」必要があります。右の図は異物乗り上げの極めてシンプルな図式での例ですが、バネが独立していない接点では「2点とも同時に持ち上がって」しまうために、せっかくの2点ある接点も同期して外れてしまっています。これは異物による嵌合阻害のみでは無く、例えば振動による瞬断なども2つの接点が同期して動いてしまえば、接続の冗長性を期待できなくなってしまいます。

前項の①~④で言えば、③と④はそもそもバネが独立していないと成立しないでしょう。一方の①や②でバネが独立していない時は、例えば相手側に局所的な欠陥がある時の効果であったり、あるいは柔らかい異物に対するワイピング効果(①)やタイヤの溝の様な排出機構(②)等を期待できる面での信頼性向上は望めるかも知れませんが、的確な冗長接続の確保にはバネの独立が必要なのです。イリソの提供する2点接点は原則としてすべて独立したバネを持っています。

例えば、あまり他にないですが、コンプレッションターミナルにおいても独立バネの2点接点を有したタイプの提供もしています。

異物除去に効果的な直列2点接点

こちらは「コネクタとは」と重複する内容となります。下の動画を再生いただくと一目瞭然ですが、直列タイプの2点接点には異物をワイピングする効果があります。この効果が期待できるのは前々項での①~④の部類中の①の直列タイプのみです。イリソでは2点接点採用時には、この異物除去効果に重きを置いており、直列タイプをメインとしています。実際に多くのお客様での異物による嵌合トラブルの改善に貢献しています。

2点接点の課題:高速伝送との親和性

それでは2点接点は万能なのかと言うと、難しい側面があるのも事実です。それは高速伝送との親和性の課題です。一つは端子形状が複雑になるのでインピーダンスマッチングの確保が難しくなると言う点です(課題①)。これについては、もう少し詳しい内容をイリソテクニカルノート「『フローティング』と『高速伝送』は相反する要求?」の方でもしていますので、興味のある方はご参照ください。

もう一つの問題は、起こってしまうとこちらの方が深刻なのですが、初期特性が良いものにおいても「2点接点の片側が外れると性能が出なくなる」と言う問題です(課題②)。外れた側の接点が「スタブ」と呼ばれる状態になり、そこで高周波信号が共振を起こすなどして健全な伝送が維持出来なくなってしまうのです。接点が2カ所ある事で冗長性を確保していたはずなのに、ある領域を超えるとむしろ「リスクをより多点で抱えてしまう」事になるのです。

これは例えば機器立ち上げ時の直流/低周波信号検査などでは見つからないと言う難しさもあります。こう言った問題が顕著になるのはコネクタサイズや具体的設計にもよりますが、10Gbpsを超えるあたりから顕在化している例がある様です。こう言った高周波側での現象は、現物での検証による再現が難しいので、事前検証として電磁界シミュレーションによる片側外れ時の性能変化の確認などを実施することなどでリスクが低減出来ます。一方で、ある程度より低いレートの「高速伝送」であれば、信頼性の向上を期待できます(図)。そもそも課題①の解決をこの領域まで持ってくるにもち密な設計が必要となりますので、現在の所限られたところでのみ顕在化している問題でもあります。

現在イリソ製品ではこの問題が顕在化するような領域(10Gbps対応以上)の2点接点コネクタはリリースしていませんが、こう言った課題をすべて乗り越えた先の将来の製品もイリソはあきらめていません。しかしながら、2点接点と言う方法以外の信頼性の向上方法もございますので、接続の安定性と高速伝送の両立を考えられているお客様は是非まずはご相談を下さい。

静電シールド/GND端子

静電シールドとは

静電シールドはおおざっぱに言えば、金属体で電気信号の流れる物を囲ってしまう手法です。ある場所に電流が流れる時、その近くにある金属(導体)には誘導電流と呼ばれる物が、起因となる電流と逆方向に流れます。電流が流れていると言う事は、電流の周辺に電磁界が発生しているのですが、誘導電流から発生する電磁界は、起因となった電流からの物を打ち消す「方向性」を持ちます。そこで、金属体で電子機器や部品などをぐるっと囲んでしまい、内部から発生する電磁界、すなわちノイズを打ち消そうと言う物が静電シールドです。これは外から侵入してくるノイズにも同じ効果を持ちます。様々な装置の金属筐体や、電線に施されるシールド等がこれにあたり、包み込むバッグ上のシールド製品等も市場では見かけます。

コネクタの静電シールド

コネクタにおいても、金属シェルと言う形で様々な製品に取り付けれています。イリソでもBtoBコネクタでシールド付きの物をリリースしています。差動伝送にも効果はありますが、差動では線路内の”カップリング”と言う現象で電界が閉じやすいため比較的マシなのですが、電界の発散しやすいシングルエンド伝送などにはより大きな効果を発揮します。

静電シールドのギャップと言う課題

ところで、我々コネクタメーカにとっても頭が痛い問題があります。それはシールドのギャップをどう管理すべきかと言う問題です。こう言った機内結線様のコネクタでは、基板上に実装するために特にSMT実装ではどうしてもシールドに隙間が生じます。特にX線等を用いずに半田状態(フィレット等)のビジュアル検査の実施行いたい場合は大きく確保する必要があります。このギャップから電磁界の漏れが発生し、特に波長の短い高周波ほど狭い隙間から逃げていくようになりますので、そもそもの静電シールドの有効性が失われてしまう事もあります。その様な状況であれば、あるいは個別部品のシールドにかかるコストを別の方法の対策(追加対策部品等)に回した方が良いかも知れません。一方で、BGAやプレスフィットの様な接続形態との組み合わせ等であれば、このギャップをより小さく出来ますし、SMTタイプであっても覆い隠すようなギミックも考案/商品化されています。これらのオプションは、実際のお客様の製造プロセスや期待コスト等とのマッチングを見ながら検討するべきでしょう。加えて、装置全体のEMC特性の向上が必要なのか、あるいは自家中毒(無線モジュールとの干渉等含む)対策が必要なのかと言う当たりも考慮すべき点です。

グランドターミナル

グランドターミナルは、静電シールド等を接地/接続するための端子です。右の図はFFCが持つ静電シールド(テープ)をコネクタを介して基板まで接地させるための端子です。このオプションとして多点接点化=グランドターミナルを多数に増やしたオプションを持つコネクタがあります(カスタム対応品)。これによって、接地抵抗を低減させ実際にいくつかのお客様で効果を発揮しています。

(当社では製品化していませんが)I/Oケーブルの金属シェルの嵌合部に見るディンプル構造も同じ目的の物で、シールドの接地抵抗を低減させる/ひいてはシールド効果を高める目的で施されています。先ほどのギャップの課題に加えて、いかに低抵抗で接地をするかと言う点も静電シールドの性能を決定づける要因となります。

静電シールドはその効果が見込まれる領域では非常に優秀で比較的安価な対策方法です。EMCと静電シールドの効果に関しては部品単体での実地に近い定量評価が困難なため、イリソでは電磁界解析と近接次回測定等の手法を組み合わせての評価とお客様のフィードバックからノウハウの蓄積を行っています。上記の様な課題の解決に取り組み、静電シールドのもたらす「信頼性の向上」をさらに高い所に上げるために日々の開発を継続します。