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2024年3月期 社長インタビューINTERVIEW WITH THE PRESIDENT FOR THE FY2023

車載のイリソから、モビリティのイリソへ。次の成長ステージに向けて飛躍します。

2024年3月期 社長インタビュー

Q: 2024年3月期を振り返り、営業状況を総括願います。

鈴木:
売上高は為替影響により計画を上回るも、営業利益・経常利益の減益を余儀なくされました。

前3ヵ年中期経営計画の最終年度となった2024年3月期は、中国の景気停滞や欧州におけるEV補助金の打ち切りなどを背景に、下期より車載市場の伸長が減速し、インダストリアル市場の設備投資調整やコンシューマー市場の需要減少も続く状況となりました。

そうした中で当社事業は、インフォテインメント分野やパワートレイン分野を中心とする車載市場の伸びにより、インダストリアル市場とコンシューマー市場の落ち込みをカバーしましたが、売上高は増収ながら、為替効果を除くと前期をわずかに下回る実績となりました。利益面は、原材料価格の高騰や人件費の上昇、為替影響などを収益構造の改善で吸収しました。しかし、新ERPシステム導入および秋田工場建設への先行投資による固定費の増加に対し、想定していた売上高を確保できなかったため、営業利益・経常利益において減益を余儀なくされました。

結果として2024年3月期の連結業績は、売上高552億71百万円(前期比4.5%増)、営業利益59億36百万円(同14.5%減)、経常利益71億89百万円(同6.2%減)、親会社株主に帰属する当期純利益55億93百万円(同0.9%増)となりました。

営業状況を市場別に振り返ると、モビリティ市場(車載市場より呼称変更)は、自動車生産の回復を受けて海外顧客向けを伸ばしたインフォテインメント分野が増収を牽引し、高速伝送対応の新製品も成果を上げました。パワートレイン分野も堅調に推移しましたが、第3四半期より中国顧客の調整が生じました。インダストリアル市場は、中国における設備投資の調整が響き、日本国内でも5G基地局向けの減少が続いたことから減収となりました。コンシューマー市場は、ゲーム機およびOA機器向けの需要減により低迷し、減収となりました。

Q: 今期より始動した新中期経営計画をご説明願います。

鈴木:
車載からモビリティへの転換を推進しつつ、インダストリアル市場のグローバル強化を図ります。

終了した前3ヵ年中期経営計画においては、世界の自動車生産台数の増加とxEVシフトの加速を取り込むことで成長軌道への回帰を果たし、長期ビジョンの2030年3月期目標に掲げる「売上高1,000億円」「接続部品業界順位 世界10位以内」の実現に向けて、足場を固めることを目指しました。しかし、自動車市場の回復遅れと中国経済の減速などによる影響を十分に跳ね返せず、最終年度目標の「売上高520億円」「営業利益率20%」に対して、売上高が為替効果を除く実力値で未達となり、営業利益率は10.7%と低く、収益性の改善も回復途上となりました。

これらの成果と課題を踏まえ、当社は2025年3月期から2027年3月期までの3ヵ年を期間とする「2026中期経営計画」を始動しました。本計画は、前提となる3年後の市場予測として、世界の自動車生産台数が足もとの9,000万台から9,500万台へ緩やかに増加し、xEV構成比率が26%から43%へ成長すると見込んでいます。その中で当社は、計画最終年度の2027年3月期連結業績における「売上高650億円」「営業利益100億円(営業利益率15.4%)」の達成を目指します。また、新たに資本効率の改善について「ROE 10%」「ROIC(投下資本利益率) 10%」を目標に掲げました。

計画達成に向けた重点施策の筆頭は、「車載のイリソ」から「モビリティのイリソ」への基盤構築です。パワートレイン分野および統合ECU分野で業界No.1の地位を築き、センサー分野では成長の土台づくりを進めます。そして車載で培った耐振・耐熱、高速伝送の技術を活かし、建機や農機、eVTOLなどのモビリティ市場へ事業ポートフォリオを拡げていく考えです。

重点施策の二つ目は、インダストリアル市場を第二の柱へ成長させるためのグローバル強化です。制御機器向けのワールドワイド展開とともに、ロボット・AI関連向けの品揃えを拡充し、半導体製造装置分野や通信分野、エネルギーマネジメント分野への参入強化を図ります。

同時に国内・海外全生産拠点の体制・役割を見直し、生産性と投資効率、モノづくり力を高めていきます。

本計画におけるもう一つの注力テーマは、サステナブル経営のさらなる深耕です。その活動を当社の持続的成長につなげていくために、このたび5項目から成るマテリアリティ(重要課題)を特定し、主要KPIと具体的な目標数値(2031年3月期)を定めました。

当社は「2026中期経営計画」の3年間、ここに述べました取り組みを着実に遂行し、次の成長ステージへの飛躍を果たすべく、前進してまいります。

Q: 株主の皆様へのメッセージをお願いします。 

鈴木:
資本コストと株価を意識した経営を実践し、新たな還元方針にもとづく増配を実施します。

今回の期末配当は、配当性向30%以上の安定配当を維持する株主還元方針に則り、予定通り1株当たり90円(前期比10円増配)を実施しました。

「2026中期経営計画」においては、「資本コストと株価を意識した経営の強化」を掲げ、資本コストを上回るROICの達成と、最適な資本構成による投資効率の改善を打ち出しました。また、新たな株主還元方針として、配当性向40%超またはDOE(自己資本配当率) 5%を目標に安定配当を維持し、自己株式取得も含めて還元の拡充を図るものとしました。この新方針により、2025年3月期の期末配当は1株当たり100円を予定し、計画最終年度の2027年3月期に向けて、これを同150円へ高めていきたいと考えております。

私たちは、「つなげる」価値の提供を通じて、ステークホルダーの皆様とともにサステナブルな発展を目指し、豊かな未来を実現してまいります。引き続き当社事業へのご支援を賜りますようお願い申し上げます。